現代の家庭において、インターネット接続は生活インフラとして欠かせない存在となりました。スマホやタブレットによる動画視聴、携帯ゲーム機でのオンライン対戦、在宅でのリモートワークやオンライン学習、スマートホームデバイスの利用など、日常生活の様々なシーンでWi-Fiでのワイヤレス接続が必要とされています。
Wi-Fiの無線LAN環境を快適かつ安定させるには、Wi-Fiルーターの置き場所が重要です。Wi-Fiルーターの設置場所を決める際には、単に電波の届きやすさだけではなく、インテリアとの調和と部屋に溶け込む設置方法も考慮する必要があります。
この記事では、Wi-Fi接続の速度安定とインテリアと調和するポイントを抑えながらWi-Fiルーターのおすすめの設置方法について詳しく解説します。
電波の特徴
電波の伝わり方
電波は目に見えない光の一種であり、離れた場所へ情報を送るための電気エネルギーの波です。電波は障害物がない限り直進しますが、伝搬する過程で反射、透過、回析、干渉といった現象が生じます。
また、距離が遠くなるほど電波の強度は弱くなり、周波数が高いほど減衰して遠くまで電波が伝搬しにくい特性を持っています。

電波を透過しやすい素材
自宅でよくみられる素材の中で、電波が透過しやすいものには紙、布、プラスチックがあります。Wi-Fiルーターのケースがプラスチック製であることからも分かる通り、これらの素材は電波をほとんど減衰させずに通過させます。
木材やガラスも比較的電波を透過しやすい素材ですが、厚みがあると若干の減衰が見られます。
一方で、金属と水は電波が透過しにくい素材です。エレベーターの中でインターネット接続が困難になったり、通信速度が遅いと感じた経験はないでしょうか。エレベーターは金属製の壁に囲まれているため電波が届きにくいことが原因です。実際、携帯電話をアルミホイルで巻くだけで電波が大幅に弱まります。
また、水は電波を吸収する性質があるため、雨の日には通信が不安定になることがあります。
Wi-Fi電波の特性
現在Wi-Fiの電波で使われている周波数は2.4GHzと5GHzと6GHzです。2.4GHzと5GHzは以前からWi-Fiの電波として使用されていますが、2022年に登場したWi-Fi 6E(Wi-Fiの通信規格)から6GHzの周波数の使用が始まり、2023年に登場したWi-Fi 7でも引き続き6GHzを使用しています。
周波数によって特性に違いがありますので解説します。
2.4GHz
- 電波が遠くまで届きやすい
- 障害物にも強い
- 電子レンジ、IHクッキングヒーター、Bluetoothなどと同じ周波数帯で干渉しやすく不安定
5GHz
- 電波は2.4GHzに比べ減衰しやすく遠くまで届きにくい
- 障害物に弱い
- 干渉しにくく安定
- 軍事、気象などのレーダーとの電波干渉を回避するDFS(Dynamic Frequency Selection)機能のため、他のチャネルへ変更が発生し通信が途切れてしまう場合がある
6GHz
- 電波は2.4GHzに比べ減衰しやすく遠くまで届きにくい
- 障害物に弱い
- Wi-Fi 6Eから使用された周波数帯のため、通信速度の遅い端末に通信を占有されず安定
Wi-Fiルーター設置場所の基本原則

Wi-Fiルーターの設置場所を選ぶ際には、いくつかの基本的な原則を押さえておくことが重要です。これにより、家庭内でのインターネット接続がより安定し、快適になります。ここでは、Wi-Fiルーター設置の基本原則について解説します。
家の中心に設置する
Wi-Fiルーターを設置する際の基本原則の一つは、家の中心に配置することです。これにより、ルーターから発信される電波が家全体に均等に届きやすくなり、どの部屋でも安定した接続が期待できます。一人暮らしなどでワンルームのアパートに住まわれている方は特に気にする必要はありませんが、家の隅や角に設置すると、電波が届きにくいエリアができてしまいます。
Wi-Fiルーターをどこに配置しても電波が届かないエリアがある場合は、Wi-Fi中継器を使用することでWi-Fiエリア拡大ができます。
高い場所に設置する
Wi-Fiルーターは、できるだけ高い場所に設置することが望ましいです。これにより、家具などの障害物を避けて電波を遠くまで届けることができます。東京タワーやスカイツリーのような電波塔が高いのも同じ理由からです。水分を多く含む人の体も障害物となりますので、ルーターを高い位置に置くことは信号を遠くまで届けるのに効果的です。
新しいデバイスをWi-Fiに接続する際やネットワークに問題が生じた時には、ルーターのボタンを押したり電源ケーブルを抜き差しする必要があるかもしれません。そのため、ルーターは簡単に操作できる位置に設置するようにしましょう。
電波遮蔽物を避けて設置する
電波は金属や水には透過せず反射・吸収してしまう性質があります。金属製の棚や水槽や加湿器のそばにWi-Fiルーターを設置してしまうと電波の届く範囲が制限されてしまいます。目隠しのためテレビの裏にルーターを置きたくなりますが、電波が弱くなって届かないエリアができてしまいますので避けましょう。
電波干渉機器を避けて設置する
Wi-Fiの電波は2.4GHz、5GHz、6GHzの周波数帯域を使用しています。特に2.4GHzの周波数は電子レンジやIHクッキングヒーター、Bluetoothなども使用しているため、これらの機器の近くで使用すると電波干渉を引き起こし接続が途切れるなど不安定接続が発生してしまいます。
Wi-Fiルーターを隠す方法
Wi-Fiルーターをそのままリビングなどに設置すると、生活感が出てしまいインテリアに溶け込まず、ルーターだけが目立ってしまうことがあります。また、ルーターには電源ケーブルやLANケーブルが接続されているため、これらのケーブルも隠してすっきりとした見た目にしたいものです。ここでは、Wi-Fiの速度を維持しながらルーターを隠すいくつかの方法を紹介します。
棚に入れる

Wi-Fiルーターを木製またはガラス製の棚に収納するとケーブルも一緒に隠すことができますが、棚によってはケーブルを通す穴を開ける必要があります。木やガラスは電波を通しやすい素材ですが、厚みがあると電波の強度が低下する可能性があるため、注意が必要です。
布で隠す

電波が透過しやすい布製品を使ってルーターを隠す方法です。お好みのデザインの布製品を選んで、部屋のインテリアに合わせつつルーターを隠すことができます。熱がこもらないようにルーターの通気口を塞がないように注意することが大切です。
キャンバスの裏側にルーターを隠すのも一つの手ですので、ぜひ参考にしてみてください。
専用の収納ケースを入れる
専用のWi-Fiルーター収納ケースが市販されており、カラーバリエーションも豊富です。自分の部屋にマッチするケースを選びましょう。ルーターとモデムを一緒に収納可能で、プッシュピンを使用して壁掛けできるケースもあり、障害物を避けるように高い位置に設置することもできます。
家づくりの工夫

マンションの方は難しいかもしれませんが、新築注文住宅で一軒家を建てる方は、ONU(光回線終端装置)置き場やルーター置き場を想定して家づくりをしましょう。ONUは光信号とデジタル信号を相互変換する装置であり無線電波は送信しないため家の中心に設置する必要はありません。ONUはファミリークローゼットやパントリーなど生活エリア外に配置して、Wi-Fiルーターを配置する場所まで壁内配線でLANケーブルを引けるように設計しましょう。有線LANコネクタの近くにはWi-Fiルーター用のコンセントも忘れずに設置しましょう。
有線LANのケーブルは性能がカテゴリで分類されています。これから家を建てる方は、壁内配線に使用するLANケーブルは最大通信速度10Gbpsのカテゴリ6A以上のケーブルを選びましょう。
さいごに
通信性能を維持しながら上手にWi-Fiルーターを隠すためのアイデアをご紹介しました。ちょっとした工夫で、インテリアの一部としておしゃれに、そして自然に馴染ませることができます。快適な生活が送れるようぜひ試してみてください!
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